投影

実家の住人が入れ替わり立ち代わりした時、住む人によって雰囲気がずいぶん変わるなぁと感じた。


父は一見小綺麗だけど雑然としていて、兄は埃っぽかった。
家具の配置は変わりないが、家の雰囲気に確かに違いがあった。
これはおもしろいことだった。
人は空気を連れ歩いているようなものなのだろう。


わたしが一週間弱、兄の引っ越し先に泊まった時、兄はうちじゃないみたいだと言った。
珈琲グッズや調理器具を持って行ったからだろう。


わたしたちはいつも、自分に付随するものと一緒にある。
道具や、洋服や、空気感。
物の選び方、管理の仕方、何が好きで、苦手か。
それらは自分を構成するエッセンスだ。


いいも悪いもなく、自分から発せられるものに無駄なんてない。
それは部屋や物や汚れという、別の形をとった、自分自身としてある。