水の世界

ベタを飼いはじめた。

熱帯魚だ。
ペットショップで、小さなビンに入れられていた。
じっと見つめあった。


飼いやすい魚としてあげられることが多く、名前は覚えていた。
それほど可愛いという印象はなかった。
しかしその薄オレンジのベタは可愛かったし、他のベタは全部同じに見えた。
魚にも「個」のようなものがあるんだなと思った。
広い水槽で泳がせてやりたいと思った。



もともとは、めだかを飼うつもりだった。
水槽は魚を入れる一ヶ月くらいから稼動させておくのが望ましいという。
家にあるのはカルキ抜きした水、水槽、殺菌中の水草、さっき買った流木。
この状況で魚を買うのは好ましくない。
しかしわたしはその日、ベタを連れ帰った。
一目惚れみたいなものだろうか。
必要なものは最低限揃えた。



ベタはよくこっちを見ている。
見ているようで見ていない空虚さではなく(よく疲れてる人に、《魚のような目》といいますよね)
自意識みたいなものを感じる。
ピンセットでアカムシをやると、勢いよく食べてくれた。
魚がこんなに可愛いとは思わなかった。



設備の関係上、あと1週間は小さいビンで過ごしてもらわなければならない。
汚れた水を少量抜き、少量足したが、とても緊張した。
水そのものが命みたいに繊細だ。
うまくいったら、ベタが好きだというアヌビアスナナを入れてあげたい。